人工呼吸器のモード、設定はもう理解できましたね。
今回はさらに細かい設定について解説していきます。
人工呼吸器は、吸気のスタート、吸気の制限(維持)、吸気の終了(呼気スタート)の3つを制御していて、吸気スタートをトリガ、吸気の制限をリミット、吸気の終了をサイクルと呼びます。
呼気スタートのトリガを呼気トリガと表現することもありますが、一般的にはサイクルと言います。
ではそれぞれの機能と、設定方法について詳しく見ていきましょう。
トリガ
これまでに何度かトリガという言葉を使ってきましたが、あらためてトリガとは何かを解説していきます。
そもそも、トリガ(trigger)とは引き金という意味で、何かのきっかけを表しています。
人工呼吸器では吸気のきっかけを表します。
トリガには吸気努力を感知するための圧トリガとフロートリガがあり、吸気努力を感知できなければ時間トリガで強制換気がスタートします。
吸気努力はモニタ上でも確認ができます。
吸気のスタートで陰圧がかかり、流量が変動するからです。
圧トリガ
吸気努力が起こると肺の中は陰圧が発生します。
肺の圧が低下すると気道内圧も低下します。
その圧の変化を感知するのが圧トリガです。
人工呼吸器は気道内圧を常にモニタリングしているので、圧トリガは気道内圧が何cmH₂O低下したら吸気努力とみなすかを設定します。
通常は1~2cmH₂Oに設定します。
フロートリガ
吸気努力が起こると肺の中が陰圧になり、圧較差によって肺へガスが入っていきます。
肺へガスが引っ張られると回路内のガスの流量が変化します。
その流量(フロー)の変化を感知するのがフロートリガです。
人工呼吸器は流量を常にモニタリングしているので、フロートリガは回路内の流量が何L/min減少したら吸気努力とみなすかを設定します。
通常は2~3cmH₂Oに設定します。
トリガとPEEP
トリガを設定する上で注意しなければならないのが、人工呼吸器は気道内圧、回路内の流量しかわからないという点です。
肺胞内圧と気道内圧は必ずしもイコールではありません。
気道内圧が0でも肺胞内に圧が残っている状態をオートPEEP(内因性PEEP)と言います。
呼気を吐き切れていない状態ですね。
例えば気道内圧0cmH₂OでオートPEEPが7cmH₂Oかかったまま患者が吸気努力をしたとします。
この時の圧トリガ設定が-2cmH₂Oとすると、患者がどれだけ陰圧を発生させられれば人工呼吸器が吸気努力を感知できるでしょうか。
まず、肺胞内の圧を気道内圧と同じ0cmH₂Oにするために-7cmH₂Oまで陰圧にする必要があります。
そしてさらにトリガ設定である-2cmH₂Oまで陰圧をかけて、ようやく人工呼吸器は吸気努力を感知します。
つまり、今回のケースでは-9cmH₂Oもの陰圧を患者自身の吸気筋で作り出さなければ吸気努力を人工呼吸器は感知できないのです。
圧較差がなければ回路内の流量に変化は起こらないので、フロートリガでも同様に気道内圧を陰圧にするまで吸気努力をしなければ感知できません。
そこで設定するのがPEEPです。
気道内圧にオートPEEPより少ないPEEPをかけることで気道内圧のみにPEEPがかけられます。
上記のケースで今度はPEEPを5cmH₂Oかけて、気道内圧を5cmH₂Oにした場合を考えてみましょう。
肺胞内の圧を気道内圧と同じ5cmH₂Oにするために、-2cmH₂O陰圧をかけ、さらにトリガ設定である-2cmH₂Oまで陰圧をかけると人工呼吸器は吸気努力を感知します。
今回は-4cmH₂Oの陰圧で吸気努力を感知できました。
このようにトリガの補助としてもPEEPが活用できます。
基本的にPEEPは5cmH₂O程度はかけておく方がいいですね。
※人工呼吸器によってはそもそもPEEPを0cmH₂Oにできないものもあります。
トリガのトラブル ① オートトリガ
患者は呼吸をしようとしていないのに、吸気努力をトリガして人工呼吸器が送気することがあります。
この状態をオートトリガと呼びます。
例えばトリガの感度が鋭すぎ(トリガが低すぎ)て、呼気の揺れや回路が少し動くだけで人工呼吸器が吸気努力と勘違いして吸気を送っているような場合です。
この場合はトリガの感度を少し鈍く(トリガを上げ)て対応します。
あるいは適正なトリガ感度でもオートトリガが起こる場合があります。
回路内に水が溜まっており、呼吸のたびに水が動く場合はその水の動きを感知してしまうことがあります。
この場合は回路内の水を除去することでオートトリガは消失します。
トリガのトラブル ② ミストリガ
逆に患者が一生懸命吸気努力をしているのに、人工呼吸器がまったく感知できない状態をミストリガと呼びます。
患者の吸気がトリガ感度より低い(弱い)と、人工呼吸器は吸気努力に気が付きません。
この場合はトリガ感度を鋭く(トリガを下げ)て対応します。
ミストリガはなかったとしても、患者が一生懸命吸気努力をしなければ人工呼吸器で感知ができなければ正しいトリガ感度とは言えません。
この状態では呼吸仕事量の軽減になりませんよね。
患者の胸に手を置いて実際に吸気筋の動きを確認しながら、人工呼吸器の動作と合っているのか確認しましょう。
リミット
リミットは吸気の制限、維持を行います。
VCVの説明の時にもお話ししましたが、1回換気量:500ml 流量60L/min(1L/s) 吸気時間:1sの場合、そのまま1秒間吸気を行うと1Lが送気されてしまいますよね。
しかし、1回換気量が500mlへ到達すると、人工呼吸器は送気を止めます。
これが容量リミットです。
また、VCVでは、流量を維持しているので流量(フロー)リミットとも言えます。
では、PCVは何をリミットにしているでしょうか。

圧ですか?
そう、正解です。
PCVは設定した圧に到達するとそれ以上の圧をかけないようにリミットが設けられています。
これが圧リミットです。
リミットの種類
・VCV:換気量リミット/フローリミット
・PCV:圧リミット
サイクル
吸気の終了を決定するのがサイクルです。
さて、吸気の長さはどのように決まるか、覚えていますか?

強制換気は吸気時間、自発呼吸は患者自身が決めます。
その通り。
強制換気については時間サイクル、自発呼吸はフローサイクルと呼びます。
自発呼吸の吸気にかかる圧はPSでした。
つまり、PSにおける吸気の終了を決めるのはフローサイクルと言うことです。
サイクルは呼気のスタートでもあるので呼気トリガとも言えます。

呼気トリガは吸気のトリガのように設定で調整はできないんですか?
もちろんできます。
ターミネーションクライテリアという設定を操作すると調整できます。
ターミネーションクライテリア
ターミネーションクライテリア:termination criteriaは終了基準という意味で、最も大きい流量を100%として、吸気が何%まで低下したら吸気を終了するのか決める設定です。
一般的には25%ですが、COPDのような気道抵抗が高く呼気が吐きにくい場合は最大流量が低く、なかなか下がらないので少し高めに設定します。
逆にコンプライアンスの高い間質性肺炎のような肺は、硬くしぼみやすいのですぐに吸気が終わらないようにターミネーションクライテリアは低めに設定します。
患者と人工呼吸器の同期に関わる部分なので、患者の呼吸を観察し、個々に調節するようにしましょう。
まとめ
人工呼吸器において、吸気を制御する設定について理解できたでしょうか。
患者の呼吸状態は日々変化します。
人工呼吸管理中は人工呼吸器の数値やグラフィックモニタばかりに目が行きがちですが、患者の状態を観察することを忘れないようにしてください。
定期的に患者の状態をアセスメントし、それぞれ目的にあった設定になっているかその都度確認しましょう。
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