高流量酸素器具については酸素療法のページで触れましたが、詳しい設定方法についてこちらで解説していきます。
酸素流量計に繋いで酸素を流せば使える低流量酸素器具と異なり、高流量酸素器具はセッティングや設定方法が特殊なため、採用していない施設もあると思います。
今現在採用されていなくても、今後導入される可能性があるかもしれませんし、転職先で使用しているかもしれません。
セッティングや設定方法を覚えておきましょう。
高流量酸素器具とは
患者の口元に高流量の規定酸素濃度の混合ガスが流れ続けるような酸素器具を高流量酸素器具と言います。
さて、高流量とは具体的にはいくつのことでしょうか。
えっと、酸素流量計のMaxが15L/minだから15Lくらいですか…
残念、全然違います
通常1回の呼吸は約0.5Lを約1秒かけて吸います。
吸気に必要な流量は秒速0.5Lです。ということは、分速30Lですね。
つまり、高流量とは30L/min以上ということになります。
このように30L/min以上の規定酸素濃度の混合ガスが流れるよう正しくセットできれば、患者の呼吸によって酸素濃度が変わらないのが高流量酸素器具の特徴です。
でも、酸素流量計は15L/minまでしか流せませんよ
そのとおり。
酸素流量計で30L/minもの高流量を流すことはできないので、高流量酸素器具の酸素濃度は50%が限界です。
高流量酸素器具はネブライザやベンチュリーマスクがありますが、ここではネブライザーについて詳しく説明していきます。
ネブライザー
使用流量:4L~15L/min
酸素濃度:35~50%
いわゆるインスピロンですネブライザ―ですね。
ちなみに“インスピロン”は日本メディカルネクスト株式会社のネブライザー商品名です。
他社の商品もありますが、インスピロンが通称名になってしまいインスピロンではないにも関わらずインスピロンと呼ばれていたりします。
必要物品
- 恒圧式流量計 or 高圧式流量計
- ネブライザー本体
- 滅菌蒸留水
- 蛇管
- マスクor Tアダプタなど
- (加湿器)
- (ウォータートラップ)
流量計についてはこちらを確認しましょう。
セッティング方法
写真のように、蛇管をネブライザの口に接続し、蛇管の反対側に患者側デバイスを接続します。
加湿器を使用する場合は蛇管の途中を切断し、ウォータートラップをかませます。
セッティングしたときにウォータートラップが一番下に来るような位置にセットしましょう。
患者デバイスはマスク、トラキマスク、Tポートなどがあります。
マスク
マスクタイプの患者デバイスは患者の呼気が確保できるよう大きな穴が開いたものを使用します。
簡易マスクとは異なりますので注意しましょう。
簡易マスクの装着と同様、隙間がないようにぴったりと顔にフィットさせます。
トラキマスク
”トラキ”の名の通り、気管切開患者に対して使用されます。
前述のマスク装着と同様、頚部にぴったりと合わせる必要がありますが、PMDA情報でも注意喚起がされているように、装着に注意が必要です。
気切口をトラキマスクでふさがないように気を付けましょう。
PMDA情報はこちらからpdfファイルが閲覧できます。
Tポート
気管切開患者や、挿管患者に使用されます。
Tポートの場合、上記2つのマスクと異なり吸気ガスをリザーブする部分がないので、蛇管を一節分(約15cm)をネブライザ接続の反対側に接続します。
設定方法
ネブライザーが必要と判断されたら、まず酸素濃度の指示をもらいましょう。
(Drも設定方法を知らない場合があります)
ネブライザーは酸素濃度を決めてから酸素流量を合わせます。
ネブライザーのダイアルを指示酸素濃度に合わせたら、下の図を参考に酸素流量を設定します。
青く表示している枠内であれば設定が可能です。
表を毎回確認するのは大変ですし、患者の呼吸が0.5L以上の吸気や吸気流速が早い場合は表のとおり設定しても不足する場合があります。
その場合は、酸素濃度のダイアルを合わせたら酸素流量を徐々に上げてゆき、吸気のタイミングでも呼気の穴から蒸気が出続けるまで動かすと設定酸素濃度でガスが供給できます。
吸気のタイミングで蒸気が途切れる場合は、吸気に足りない分を大気から吸っているので、実際患者が吸っているガスは設定酸素濃度より低い濃度になっています。
セッティング時だけでなく、定期的に蒸気が途切れていないか確認するようにしましょう。
まとめ
高流量酸素器具について理解できましたか。
ネブライザは常に30L/min以上の流量が流れるので、PEEPが5cmH₂O程度かけられます。
人工呼吸器離脱直後で、呼吸状態が不安定な患者に使用されることもあります。
低流量酸素器具と異なり、セッティングや設定方法が特殊なので、いざ使用するとなったときにすぐ対応できるようしっかりと覚えておきましょう。
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