皆さんの施設には用手換気具BVMやジャクソンリースはありますか?
あの、BVMって何ですか?
BVMはバッグバルブマスク、いわゆるアンビューバッグのことだよ
BVMは救急カートには必ず入っていますよね。
人工呼吸器を使用する場合は何かあったときのために手の届くところに置く施設もあるでしょう。
一方で、ジャクソンリースは見たことがないという方もいると思います。
ここではいざとなったときにすぐ使えるようにBVMとジャクソンリースの構造や使い方、使い分けについて説明します。
ぜひ学んでいってください。
用手換気具
BVMやジャクソンリースというのは、用手換気のために使用されます。
人工呼吸器患者には停電や人工呼吸器などが故障した際や、検査や入浴などのために一時的に人工呼吸器を外す場面に使用します。
また、呼吸停止の際に蘇生目的でも使用されますね。
救急カートに入っているのもこう言った理由からです。
ではこれからそれぞれの特徴について見ていきましょう。
BVM
Ambu社の蘇生バッグが有名なので、現場では”アンビュー”と呼ばれていますが、このタイプの蘇生バッグの名称はBVM(バッグバルブマスク)です。
以下のようなメリットがあり、多くの施設で採用され、使用されています。
一方で、以下のようなデメリットもあります。
一方向弁がある(動作原理参照)ので、呼気を再呼吸することはありませんが、この一方向弁のせいで患者が吸気努力を行ってもそのままではガスを吸うことができません。
こちらがバッグを押さない限り患者は吸気ができないので、自発呼吸がある患者へ使用する際は患者の吸気努力に合わせてバッグを押す必要があり、かなり難易度が高くなります。
患者の吸気努力と用手換気のタイミングが合わないと呼吸仕事量の軽減が見込めない上、肺損傷の恐れもあります。
BVMを使用する場合は患者の吸気タイミングと呼気タイミングに細心の注意を払いましょう。
BVM動作原理
BVMは患者接続口側に呼気時のみ開くバルブと、自己膨張バッグにガス供給時のみ開くバルブがついています。
- バッグを握ると呼気弁、ガス供給弁が閉じ、バッグ内のガスが患者接続口から患者へ送られます。
- バッグから手を放すと呼気弁が開き、患者の呼気は外気へ放出されるとともに、ガス供給バルブが開いて外気がバッグ内に充填されます。
※この時酸素チューブとリザーバーが接続されている場合は、リザーバーからバッグへガスが充填されます。
BVM使用前点検
リユースタイプのものは、分解清掃してから組み立てるのでもちろん点検が必要ですが、ディスポタイプのものであっても必ず点検が必要です。
患者に使用する前には使用前点検を行います。
緊急時でもすぐに使用できるよう、日ごろから点検方法を確認しておきましょう。
救急カート点検時にBVMを一緒に点検するようにするといいですね。
分解清掃、組み立て方法はそれぞれの添付文書や取り扱い説明書に従って行ってください。
※例えばアンブ社製のものはホームページに動画で詳しく紹介されています。
BVM点検方法
- 患者接続口を指や掌でふさぎ、バッグを握る
この時空気が漏れないことを確認する - バッグを握ったまま患者接続口を開放し、再度ふさぐ
- バッグを握った手を放すとバッグが膨らむことを確認する
1の時に空気が漏れる場合は、バルブの不具合の可能性があります。
再度組み立てなおすか、部品の破損がないか確認します。
3の時にバッグのふくらみが遅い、あるいは膨らまない場合はガス供給バルブの不具合の可能性があります。
ジャクソンリース
ジャクソンリースのバッグは写真の通り非自己膨張バッグなので、バッグを膨らますために酸素が必要になります。
バッグか膨らみすぎないように膨らみ具合を調整するダイアル(あるいはコック)がついており、適切な圧になるように調整しなければなりません。
また、患者接続口に漏れがあるとバッグが膨らまず有効に換気ができないことがあります。
このようにBVMに比べると扱いが難しく、あまり使用されない理由かなと思われます。
一方でBVMではできなかった以下のことが行えるので、使用方法をマスターした上で有効に使えるといいですね。
ご覧のように自発呼吸のある人工呼吸患者に一時的に用手換気を行うような場面では、BVMではなくジャクソンリースが適していると言えます。
ジャクソンリース使用準備
ジャクソンリースは、酸素チューブと蛇管、非自己膨張バッグと排出ガス調整バルブから構成されます。
ジャクソンリースはBVMと違い患者に使用する前に準備が必要になります。
- 酸素チューブを流量計へ接続し、10~15L/minに設定する
- 患者接続口を指や掌でふさぎ、排出ガス調整バルブを調整する
- 患者へ接続する
こちらの動画は日本メディカルネクストHPにて公開されているジャクソンリース蘇生回路の取り扱い動画です。
とても分かりやすいのでぜひご覧ください。
ジャクソンリース動作原理
ジャクソンリースの動作原理は至極単純です。
酸素を患者接続口とバッグへ常に流しているので、そのガスを患者が自由に吸気できる構造になっています。
バッグが膨らみすぎないように余剰ガスが逃がせるようにコックを開けて調整します。
呼気のタイミングでのバッグの膨らみがPEEPの目安です。
患者に接続したらバッグの膨らみ具合を確認し、排出ガス調整コックを調整します。
バッグの膨らみが足りないようならコックを少し閉め、バッグが膨らみすぎればコックを少し開けます。
※ガスの出口がなくなるのでコックは絶対に全閉しないように注意してください。
気道確保
挿管チューブや気管切開チューブに接続する場合を除き、用手換気具を使用する際には必ず気道の確保が必要になります。
マスクのフィッティングが悪かったり、気道が確保できていなかったりすると、いくら用手換気を行っても肺へガスが送られないので意味がありません。
気道確保の実際
頭部や頚部の外傷などの場合を除き、基本的には頭部後屈顎先挙上の形を取ります。
- 患者の頭側に立ち(ヘッドボードは外す)、前額部と顎先に手を置く
- 前額部を押さえながら顎先を持ち上げる(頭部後屈顎先挙上)
- マスクのとがった側を患者の鼻根部に合わせ、患者の顔に密着させる
- 親指と人差し指でマスクを保持し、残りの指で患者の下顎を挙上する(EC法)
一人で行う場合はバッグで反対の頬を保持する方法(頬部保持法)を取ると換気しやすい
二人で行う場合は一人が両手でEC法を行い、もう一人がバッグを握る - バッグを握り、患者の胸郭が上がることを確認する
まとめ
用手換気について理解できましたか?
それぞれの特徴を頭に入れておくといざ必要になったときに適切に選択ができるはずです。
私は患者の自発呼吸があればジャクソンリース、なければBVM
緊急の場合はBVM、準備時間が確保できればジャクソンリースと決めています。
医療の現場で働く以上、急変がいつ起こるかわかりません。
すばやく対応できるよう今回の記事をよく読んで学んでおきましょう。
そして、必ず実際の用手換気具で練習しておきましょう。
コメント