新型コロナ 5類へ 透析施設での対応は? ※2023/4/4追記

血液浄化

政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを2023年5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げることを決定しました。

透析施設での対応がどう変わるのか、5類へ引き下げられることに対し準備すべきことを解説します。

今回は「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン」作成委員である、菊地勘医師の講演より一部抜粋してお話します。

ちなみに「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン」は2020年の5訂版(コロナ対策については記載なし)が最新ですが、今年2023年末に6訂版が出されるそうです。

新型コロナのおさらい

ウイルス増殖イメージ

改めて新型コロナとは何か、簡単に解説します。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは2019年末に中国武漢から広まった感染症です。

感染経路は飛沫感染、接触感染によるとされています。

環境表面には数日間感染力を保持したまま存在するとされ、環境面の消毒が感染予防に大きな役割を持っています。
新型コロナウイルスに対してはアルコールなどの拭き上げにより1分間で不活性化することがわかっています。

しぃな
しぃな

ちなみに消毒剤は噴霧ではなく、清拭を推奨します。

感染すると、症状が現れる2日ほど前からウイルスを排出し、症状が現れてから10日間は感染力が持続します。

現在の対策は、発症後7日間の隔離とされていますが8日以降も感染力を有している点に注意する必要があります。
特に透析患者は易感染状態のため、10日間は隔離透析が望ましいと考えられます。

第8波は主流となったオミクロン株が弱毒化したことの影響で、一般の60~70代の重症化率は0.3%、致死率は0.2%となっています。
同じように透析患者の重症化率・致死率ともに低下しているものの、一般の方より十倍近く高い割合となっています。

予防接種の効果は変異株に対しても効果があり、4回以上接種済みの場合優位に差が出ています。
透析患者は可能であれば積極的に接種していただきたいですね。

抗ウイルス剤の投与により、重症化の予防も期待できます。
ちなみに透析患者に使用できる経口薬は現在「ラゲブリオ®︎カプセル」のみです。
「パキロビッド®︎パック」と「ゾコーバ®︎錠」は腎不全患者には使用禁忌です。

透析施設の新型コロナ対策

新型コロナウイルス感染症の怖いところは、症状が出るまえから感染力を有している点です。
陽性発覚前に患者から別の患者に感染している可能性があるからです。

院内による感染経路の多くは我々医療従事者の伝搬によるものですが、そもそも皆さんの施設では「透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドライン」をどの程度順守されているでしょうか。

基本的な感染対策は以下のように示されています。
(透析施設における標準的な透析操作と感染予防に関するガイドラインより抜粋)

穿刺時、抜針時、処置の際は以下の個人用防護具を着用すること

  • サージカルマスク
  • アイシールド(ゴーグルなど)
  • 非透水性ガウン(もしくはエプロン)
  • ディスポーザブル手袋

石鹸やアルコールなどによる手指消毒の徹底

患者毎に環境整備を行うこと

  • 聴診器、駆血帯などのアルコール消毒
  • コンソール、ベッド、オーバーテーブルなど
  • シーツなどのリネン類は患者毎に取り換える

この感染対策が通常時の透析でなされていればクラスタの発生は抑えられると思われます。

では、外来通院の透析患者が新型コロナ陽性となった場合、皆さんの施設ではどのように対応していますか?

新型コロナ陽性であろうとなかろうと、透析は行わなければなりません。
通常は2m以上の空間をあけた上で、パーティションによる空間隔離、あるいは透析の時間を分ける時間隔離にて透析を継続します。

施設によっては隔離での透析が困難なため、他施設への入院などで対応されていることもあるかもしれません。
しかし、5類へ変わることにより入院の措置がとれない可能性があります。
また、他施設での透析がお願いできず、自施設で透析を行う必要もでてくると思われます。

5類へ変わるとどうなる?

まず、大前提として、分類が5類に変わるだけで新型コロナウイルスの性質や脅威が変わるわけではありません。
新型コロナウイルスは依然として感染力が高く、透析患者における重症化率、致死率は一般の方の十倍です。
それを踏まえた上で対応をしなければなりません。

2023年5月8日以降すぐにすべての対応が変わるわけではありませんが、以下のことを自施設でまかなえるようにしておく必要があると思われます。

  • 新型コロナウイルス感染の検査(抗原検査可)
  • 新型コロナウイルス感染症患者の透析継続(隔離透析)
  • 抗ウイルス剤「ラゲブリオ®カプセル」の処方

特に今現在自施設での隔離透析を行っていない場合は、早めに対策を考えておきましょう。

隔離の基本

隔離にはゾーニングが必要です。

陽性患者が透析を行うエリアをレッドゾーン、対応する医療従事者がPPEの着脱を行うイエローゾーン、非汚染エリアをグリーンゾーンとして分けなければなりません。
イエローゾーンを設けない場合もあり、その場合はグリーンゾーンでPPEを着用してからレッドゾーンへ移動し、レッドゾーンでPPEを脱衣してからグリーンゾーンへ移動します。

PPEは帽子、ガウン、ディスポーザブル手袋、サージカルマスク、アイシールドを基本とします。

N95マスクの必要性は賛否ありますが、正しく着用しないと効果がない上に正しい装着ができていないことも多く、また、高価(サージカルマスクに比べて)である点から病院ごとの判断になるかなと思います。
一部の病院ではN95マスクの供給が滞った際に、サージカルマスクの上からN95を着用し、数日間の再利用を推奨されたそうです。
この着用法では隙間だらけになるだけでなく、不潔ですよね。

しぃな
しぃな

個人的には、空気感染ではないのでN95は不要と思っています。
吸痰の際は必要かもしれませんが。

透析終了後はレッドゾーン内、イエローゾーン内をアルコールなどで清拭し環境整備します。

透析の時間をずらして行う時間隔離の場合も確実にゾーニングすることで環境表面から感染するリスクが減らせます。

空間隔離

透析室の出入り口が2か所以上あり、導線を完全に分けられる場合は陽性患者と非感染患者が交差しないようわけましょう。

個室がない場合、陽性患者と非感染患者との間は頭の位置で2m以上の距離を確保し、パーティションなどで区切ります。
患者に理解力があり、サージカルマスクの着用が確実にできる場合はサージカルマスクを着用してもらいましょう。

時間隔離

透析室での導線が確保できない場合、午前中を非感染患者の透析とし、午後を陽性患者の透析とするなど透析時間をずらして対応しましょう。

多くの施設で実施可能な方法がこちらの時間隔離だと思います。
普段透析を回さない時間帯に透析を行うことになるかもしれません。
洗浄工程などの調整が必要となる場合があります。
一度シミュレーションを行ってみてはいかがでしょう。

送迎の対応

施設ごとに送迎のスタイルは異なると思いますが、ハイエースのようなバンで複数の患者の送迎を行っている場合、陽性患者の送迎は10日間は行わない方がよいでしょう。
あるいは、可能であれば陽性患者のみを送迎するパターンも考えておく必要があります。

いずれにせよ、事前に患者や家族、入所施設などへ新型コロナに感染してしまった場合の送迎対応について話しておきましょう。

これからの対策

透析の患者層は、病識が乏しかったり、我が強い方が少なくありません。

これまでの対策を継続するのはもちろんのこと、患者への教育がより一層重要になってきます。
政府からの強制力がなくなった場合、マスクの着用や体調管理が以前より徹底できなくなる可能性があります。
感染させないための教育に加えて、感染を拡げないための対策をしっかり行っていきましょう。

※2023/3/28 追記

2023/3/24に厚生労働省より新型コロナウイルス感染症対応に係るパルスオキシメータの医療機関への無償譲渡についての連絡が届けられました。

今後新型コロナの感染症分類が5類へ引き下げられるにあたり、これまで新型コロナウイルス感染患者を診てこなかった医療機関でも新型コロナ感染患者を診ていくことになります。
特に透析患者は重篤化の危険も高く、酸素飽和度の管理がますます重要になってくることが予想されます。

新型コロナ感染患者への診療を目的とした用途で、クリニックであればMAX20台、病院であればMAX200台まで申請できるため、この機会にパルスオキシメータの配置を検討ください。

新型コロナウイルス感染症対応に係るパルスオキシメータの医療機関への無償譲渡についてのpdfファイルを印刷し、総務や事務、院長などに掛け合ってみてはいかがでしょうか。

申請フォームはこちらから。

申請期限は2023/4/26までです。(早期終了の可能性もあり)

皆さんお早めに申請を

※2023/4/4 追記

一時中断していたパルスオキシメータの無償譲渡ですが、4/10(月)から再開となります。

申請期間は4/10(月)~4/17(月)に変更されています。

また、1施設あたりの申請数は5台に変更になります。

先着順ではないそうですが、もし上限に達した場合は抽選で配布になるとのことです。

申請フォームはこちらから。

コメント

タイトルとURLをコピーしました